ウィルダネスとは

 私たちが提唱する野外災害救急法は、北米では「Wilderness First Aid」と呼ばれる分野として広く普及しています。では「Wilderness」とは何でしょうか。日本語では「ウィルダネス状況下」と訳され、次のように定義しています。 

 

「傷病への決定的な処置(病院での医療的処置)を受けられるまで時間を要する状況」 

 

 「ウィルダネス状況下」という定義を読まれてみなさんが想像される場所はどんな所でしょうか。多くの人は北米にあるような大自然、大山脈、遠隔地、また離れ小島などをイメージされるのではないかと思います。 

 

 日本国内にも地理的(距離的)な条件だけでウィルダネス状況下といえる場所は少なくありませんが、国内に存在する多くの「ウィルダネス状況下」は付加的な条件が加わることで生じるものばかりです。例えば里山。徒歩で往復1時間のトレイルであっても、降り積もる雪や日没などで容易にウィルダネス状況下に陥ることがあります。 

 

では大都市圏ではどうでしょうか。 

 

 新宿や大阪の梅田、福岡の北九州市などでは119番通報によって平均8分程度で救急車が到着するとされています。しかし、悪条件加わったら・・・ 

 

○電波状況が悪く、通報ができない。

○急な降雪によって車道に15㎝の雪が積もった。

○救助者は自分一人なのに傷病者は三人もいた。 

 

 このような条件が加わると病院到着まで長時間を要するので、「ウィルダネス状況下」であると言えます。 

 

 もしも大地震発生のため病院が被災したら、病院機能は停止してしまいます。この場合、病院にたどり着いたとしても、そこは「ウィルダネス状況下」と言わざるをえないでしょう。 

 

 このように、「ウィルダネス状況下」は日本中どこにでも起こりえる問題でもあるのです。